恋せよ乙女

「あたしに、渡したいもの……?」

「うん、そう。でも先に言っておくけど、期待はしないでよ。」


期待はしないで、だなんて、そんなの無理に決まってるじゃないですか、…とは、口に出さなかったけれど。

傍らの鞄から何かを出そうとしている様子を見ながら、否応なしに期待は高まっていく。


「期待しないでって言ったのに、言ったそばからそんな顔して…。
…――まぁいいや。ほら、これ。」


あたしがどんな顔をしていたかなんて、それはさすがにわからない。でも、呆れたように笑って差し出されたのは、可愛くラッピングされた細長い箱で。


「……開けてみて、いいですか?」


そっと受け取り、窺うように氷室さんへ問いかければ、彼は目線を反らしながらゆっくりと頷いた。
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