恋せよ乙女

赤いリボンを解き、綺麗なピンク色の包装紙を破らないよう、慎重にテープを剥がす。

包装紙の中から出てきたのは白っぽい箱で、さらにその箱を開ければ、顔を出したのはグレーのジュエリーケース。

この辺で、恐らくこれはネックレスかブレスレットなのであろうことは容易に予想がついたけれど、ジュエリーケースを開いた刹那、目に映ったものに思わず泣きそうになった。


「氷室さん、これ……」

「前に、好きって言ってただろ。偶然見つけたから、紫音にどうかなと思って。」

「覚えてて、くれたんですね。」


そっと、壊れ物でも扱うよう丁寧にケースから取り出したネックレス。ただのネックレス、そう言われればそれまでだけれど、何よりあたしが感動したのはそのペンダントトップだった。

いつか、あたしが氷室さんに好きだと言ったハイビスカス。そのモチーフが、あたしの手元で鮮やかなレッドに煌めいた。
< 387 / 396 >

この作品をシェア

pagetop