恋せよ乙女

そのアイスコーヒーのグラスが再びテーブルに置かれるまで、何となく氷室さんを見つめた。

すると案の定、彼は居心地悪そうにあたしへと視線を向ける。


「……何。見られすぎて穴が開きそうなんだけど。」

「あー、すみません。別に意味も用事も無いんです、けど。」

「ふぅん。…――あぁ、そうだ。ねぇ紫音、どうせならそれ、つけてみてよ。」


穴が開きそうだとの言葉に、ちょっと大袈裟に両手を振ってみせれば、納得したのかしていないのか、いまいち判断しにくい表情を浮かべた。

けれど続けられた言葉に、一瞬理解が追いつかなかったあたしは「はい?」だなんて、半端な返事を返してしまって。


「はい?じゃないだろ。それだよ、それ。」


そんなあたしに呆れながらも、氷室さんはあたしの手元、ゆらゆらと揺れるネックレスを指差した。
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