恋せよ乙女

「……つけてみて、いいんですか?」


彼の言葉に対し、そう窺うように問えば。


「いや、いいも悪いもそれはキミにあげたものだし。好きにすればいいよ。」


さも当たり前だとでもいうように、そう言って穏やかに微笑む。それなら、と、すぐに自身の首へと装着すると、今までのどんなネックレスよりも重たく、価値あるもののような気がしてきた。

でも、そんなのは当たり前。
何よりも大切で、誰よりも大好きな氷室さんからのプレゼント。あたしの好きな花を、あたしのために。それがあたしにとって、価値が無い訳が無い。


「……どーですか?」

「ん。悪くないよ、多分。」

「多分って……!」

「嘘だよ、似合ってる。」


そう言って笑う彼には、全く悪気なんてないのだろうけれど。嘘だよと続けられた言葉に、あたしの心臓は爆発寸前。言葉すら出なくて、顔を隠すように俯いた。
< 390 / 396 >

この作品をシェア

pagetop