恋せよ乙女
いや、嬉しくないわけはない。むしろ嬉しすぎてヤバいくらい。
でもただ、信じられなくて。だってこんな機会、滅多にないだろうし…。
だけど、ただでさえしつこく迷惑かけてるのに、あたしの意志で勝手に残って、その挙げ句送ってもらうなんて、さすがに申し訳ない。
あたしだって、少しは自覚してるんだから。
「…あの、氷室さん。」
「何?」
「あたし、別に一人で帰れますけど…」
「こんな時間に、女の子を一人で帰せる訳ないでしょ。」
指差された窓の方を見ると、確かに外は真っ暗。反射的に壁時計を見れば、思いのほか時間も過ぎている。
「一人で帰して何かあったとき、僕のせいにされちゃたまんないしね。」
そうつぶやき、クスリと笑みをもらした氷室さんを見て、今日は好意に甘えさせてもらおう、素直にそう思った。