恋せよ乙女

いや、嬉しくないわけはない。むしろ嬉しすぎてヤバいくらい。
でもただ、信じられなくて。だってこんな機会、滅多にないだろうし…。

だけど、ただでさえしつこく迷惑かけてるのに、あたしの意志で勝手に残って、その挙げ句送ってもらうなんて、さすがに申し訳ない。

あたしだって、少しは自覚してるんだから。


「…あの、氷室さん。」

「何?」

「あたし、別に一人で帰れますけど…」

「こんな時間に、女の子を一人で帰せる訳ないでしょ。」


指差された窓の方を見ると、確かに外は真っ暗。反射的に壁時計を見れば、思いのほか時間も過ぎている。


「一人で帰して何かあったとき、僕のせいにされちゃたまんないしね。」


そうつぶやき、クスリと笑みをもらした氷室さんを見て、今日は好意に甘えさせてもらおう、素直にそう思った。
< 49 / 396 >

この作品をシェア

pagetop