恋せよ乙女
「何やってるの?急がせるようなことは言ったけど、もっとまわり見て歩きなよ。相変わらず落ち着かないね、キミは。」
「あ、はい。ごめんなさい。」
あたしの顔をのぞき込むような氷室さんに、真っ赤な顔を見られたくなくて。
思わず、隠すように視線を逸らした。
「…紫音?」
「何でもないです!さ、帰りましょうか!」
不思議そうな表情で首を傾げた氷室さんに背を向け、先に生徒会室を出る。
氷室さんと再び顔を合わす前に、薄暗い廊下の冷気で火照った頬を何とかしずめた。
残ってる生徒なんていない、ほぼ無人の学校。コツコツと、普段はあまり聞くこともない足音が、やけに大きく廊下に響く。
ってか、思いのほか不気味…
さっきの暖かさなんて嘘のように、ひんやりとした空気に包まれていた。