恋せよ乙女
「あ、ここです。」
少しの距離を置いて、少しの談笑をしながら進む道。見慣れた家に向けて指を差せば、氷室さんは小さく頷く。
「送っていただいて、ありがとうございました。」
「いや、こっちこそ手伝ってもらったからね。ありがとう。」
クスリと控えめに笑う氷室さんに、あたしは満面の笑みを返した。
「じゃあ、また明日会いに行きますね!
明日こそあたしの愛を受け止めてもらいます。」
そして紡ぐ、いつもの言葉。
その刹那、氷室さんの顔に浮かんだのは、やっぱり呆れたような表情で。
「いや、会いには来なくていいし、押し付けも遠慮するけど…」
「けど?」
「手伝いになら、ぜひ歓迎するよ。」
そんな、いつもとは少し違った言葉と優しい微笑みに、
「…はいっ!わかりました!!」
また氷室さんへの愛が強まった、なんていうのは、誰にも言わない内緒の話。