恋せよ乙女
ただ、目覚めたときに氷室さんの姿が見えなくて、
氷室さんがいなくなってしまった気がして、
それが、怖くて、不安で。
ここに来たらいつでも会える、そう漠然と思っていたことが、簡単に覆されてしまったから。
「……ほら。とりあえず、そろそろ泣きやんでよ。ね?」
優しく頭を撫でながらそう言ってくれる氷室さんに、あたしは小さく頷く。
そして、しだいに落ち着きを取り戻してきた思考。やっと正常に動き始めた頭が、ある疑問をあたしに提示した。
“なぜ授業中でもあったあの時間帯、氷室さんは外にいたのか?”
氷室さんのおかげで、コンクリに顔面強打しないで済んだわけだけれど、考えれば考えるほど納得できない。
生徒会長であり、まじめで優等生な氷室さんが、授業を受けないなんてこと、あり得ないことだから。