恋せよ乙女
あたしの言葉に、氷室さんは小さな笑みを零した。
「…よく、知ってるね。」
知ってるよ。あたりまえじゃない。
だって、大好きな氷室さんのことだもん。
「紫音の言う通りだよ。でも、今日はちょっといつもと事情が違ってね。」
いつもと違う事情って何だろう?
不思議に思って氷室さんに視線を向ければ、何故かゆっくりとそらされた。
そして不意に思い出したのは、あたしの額に触れた氷室さんの冷たい手…。
ある一つの考えが、脳裏によぎる。
もしかして…、でも……。
確証なんてないし、
ホントにただ、思い上がりがすぎるかもしれないけれど。
「もしかして、あたしのこと探してたり…なーんて。」
口に出さずにはいられない、あたしが不意に気づいてしまった“いつもと違う事情”の理由。