恋せよ乙女

「はい、コレはおまけです。」

「……何コレ?」


そして、ふふふと笑いながら氷室さんに差し出したのは、裁縫の苦手なあたしが頑張って作った“氷室さん人形”。

若干いびつな形だというのはこの際気にしないことにして、ちゃんと胸のところに“love”と刺繍もしてある。


「何コレ?って失礼ですね。
明らかに氷室さんじゃないですか。」


フェルトで作られたその不格好な人形を手に、氷室さんは物珍しそうにそれを眺めていた。


「…一つ言っておくけど紫音、いくらなんでも僕は、こんなにいびつじゃないよ。それにloveって…」

「あ、それはあたしの気持ちです。」


いたってまじめに答えたあたしを見て、氷室さんはクスリと小さく笑みをこぼした。
< 7 / 396 >

この作品をシェア

pagetop