恋せよ乙女
「“どうして?”……その理由を知りたいの?」
「知りたい、です。」
「キミはそれを知って、どうするの?」
「わからないです、けど…。でもきっと、何もしないと思います。」
そう、ただ知りたいだけ。
ただ、聞きたいだけ―――…。
「聞いたらおとなしく寝る?」
「氷室さんがそうしろと言うのなら。」
「じゃあ、聞いて気が済んだらおとなしく寝なよ。」
その言葉にあたしが小さく頷けば、氷室さんは苦笑を浮かべ、その形のいい唇をゆっくりと開いた。
そして。
「今日の朝、いつもの決まった時間に、キミがここへ来なかったからだよ。」
低めの甘い声が、あたしの耳を掠める。ただそれだけで、こんなにも心臓の音がうるさくなった。