恋せよ乙女

でもやっぱり、今はそんなことを考えてる場合でもなさげで。
不安をかき消すようにゆっくりと目をつむると、横で氷室さんが立ち上がる気配…

どこに行くんだろう?
もう、帰っちゃうの?

はっとして急いで目を開けると、伸ばした手は思わず、氷室さんの制服を握っていた。


「…どうしたの?」

「どこ…行くんですか?」


迷惑なのはわかってるのに、
今はまだそばにいてほしくて。
帰ってほしくなくて。

そう必死に問いかけるあたしを見て、氷室さんは呆れたように小さく息を吐く。


「どこって…。氷枕、作ってくるんだよ。それと、タオル用の水を冷たくしてくる。
……大丈夫、まだ帰らないから。」


あたしの気持ちを見透かしているかのような言葉に、思わず、涙が零れだした。
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