恋せよ乙女

すごくすごく、この場に不釣り合いな言葉だってことくらいわかってる、自覚してる。

それを証明するかのように、氷室さんの眉間に刻まれたのは深い深いシワ。

でも今言わなきゃ、あたしを覆う心細さを払拭できそうになかった。


「大好き、なんです…」


さらに続ければ、そのシワはますます深くなって…。
今まで、何度これと同じ反応を頂いたことだろう。でもやっぱり、そんな簡単に諦められる訳もないから。

ただ、好きで。

ただ、彼のそばにいたくて。

一緒に笑ってほしい、なんてそんなこと言うつもりなんてないけど、それでも。

氷室さんの瞳に、少しでもいいから映りたいと思う。


「……そんなことより、今は寝てなよ。
ほら、泣き止んで。」


困り顔の氷室さんの表情に余計涙があふれたのは、やっぱりきっと、この熱のせい。
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