恋せよ乙女
「僕にはその感情、今はわからない。でもね紫音…、僕はキミのこと嫌いじゃないよ。」
「へ…?」
予想外の言葉に、思わず間抜けな声が漏れる。まともな言葉が出ないまま、続く氷室さんの声に耳を傾けた。
「確かに毎日毎日煩いし、迷惑してるけど、嫌いだなんて思ったことはないから。」
「…本当、ですか?」
「うん。」
嫌いじゃない、でも好きがわからない。
そう、氷室さんは言う。
それでも、あたしは氷室さんが好きだから離れたくない。
その確かな事実があたしの中にあるから、今はそれで十分だよ。
嫌いじゃないって言ってもらえただけで、今までのあたしが救われる。
今まで通りにしていていいって言われてるようで、ふっと気持ちが軽くなる。
だから、今はそれで十分。