恋せよ乙女
「…あんた、随分と他人事だね。自分のは他人にやらせるくせにねえ?」
「ははっ、そーいうつもりじゃねーんだけどな。」
「…もーいいよ。」
これ以上話していても、きっとあたしの望む情報は手に入らない。
それどころか私、氷室さんのことで頭がいっぱいで、山宮のことを傷つける言葉を発してしまいそうな感じもする。
だからあたしはその前に、生徒会室を出ることにした。
「じゃ、仕事頑張って。」とすれ違いざまにつぶやき、ドアに手をかける。
その刹那、「あ、そーいえば。」なんてつぶやかれた声に、思わず反射的に振り向いた。
「…何か、思い出したの?」
「いや、さ、たいしたことじゃねーんだけど、この二日間くらい結構ダルそうだったんだよな、あいつ。だから鈴木とかスッゲー心配してたような…」
ダルそうだった…?
どこがたいしたことじゃないのよ!
―――それに…
今この状況下で聞きたくなかった名前に、ちょっとだけ思考が停止した。