恋せよ乙女
「鈴木、さん…?」
「おー。鈴木がこれでもかってくらい世話焼いててさー」
続く山宮の言葉は、もはやあたしの耳には入ってこなかった。
やっぱり、まだ鈴木さんは…
不意にフラッシュバックする、あの“噂”。
でも今は、そんなこと考えてる場合じゃない。確かに彼女の名前に動揺したのは事実だけど、今はそれより、そんなことより。
よぎった思いを振り払うようにして頭を振ると、山宮に対して言葉を放つ。
「わかった!教えてくれてありがと、山宮昴!」
「おー…って、加藤!?」
言うだけ言って、生徒会室を飛び出した。山宮の不思議そうな声なんて、悪いけどスルー。
だってだって、今考えているのは氷室さんの状態だけ。
“ダルそうだった”だなんて、それは。
間違いなく、絶対に、あたしのせいだから。