恋せよ乙女

いつの間にか増えてきている生徒たちとすれ違いながら、どうしようか考える。

廊下を爆走しながら物思いに耽るあたしに、好奇な視線が向けられるけれど、そんなのに構っていられない。

……まず、氷室さんの家に行ってみよう。一人暮らしって言ってたし、体調ヤバすぎてぶっ倒れてるのかも…

どんどんマイナスの方に引き込まれていく思考、そんな考えを振り払おうとすると、重大な事実に今さらながら気づいた。

あたし、氷 室 さ ん の 家 の 場 所 、知 ら な い 。

自分のバカさ加減に、思わず出たため息。目の前にある玄関に背を向けると、今来た道を引き返し、ある人物のクラスに向かう。

そして。


「おいっ!加藤隼人ーっ!!聞きたいことあるんだけどっ。」


我がいとこに半ば掴みかかりながらそう問えば、訳がわからないとでもいうように、彼はあたしから距離をおいた。
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