恋せよ乙女

「…ん。これでいいのか?」

「うん、ありがと。じゃ、あたし行くから、今日も学校休むってあたしの担任に言っといてね。」

「は? お、おぃ!紫音?!」


隼人の呼び止める声なんて、耳には届いていなくて。周囲の雑談の声も、笑い声も、あたしには何にも聞こえない。

猛ダッシュで学校を駆け抜け、校門を出る。ただ隼人の地図を見つめながら、ひたすらに道を走った。

そして気づいたのは、彼の家はあたしの家とは真逆の方向にあるということ。

それを知って、本当に申し訳ないことをしたと今になって悔いる。

真逆なのに、家まで送らせた。
こんなに遠いのに、遅くまで看病させた。

あたしは、氷室さんのこと、何にも考えてあげられてなかった。
自分本位過ぎた、あたし自身の後悔。
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