恋せよ乙女

鍵は、さすがに閉まってるよね…?

考えた末、ドアに掛けた手。
あまり期待せずにノブを回せば、カチャリという音と共に開いたドア。…って、え?開いた?

失礼だと思いながらも、そっとドアを開く。次第に見えてくる中の様子に、何で鍵開いてんの?なんて疑問は、見えてきた光景のせいでどこかに吹っ飛んでしまった。


「え、ちょ…。氷室さん?!」


落ちている学校指定かばん。そしてその傍らに、制服を着て玄関に倒れている彼。
この様子から、明らかに学校へ行こうとしていたことがうかがえる。


「氷室さん!大丈夫ですか?」


うつ伏せていた状態から仰向けになおし、そっと彼の額に触れれば、尋常じゃないほどの熱…。

何なんだろう、この人…。
これで学校行こうとしていただなんて、あたしでも信じられないよ。
< 96 / 396 >

この作品をシェア

pagetop