恋せよ乙女
荒い呼吸を繰り返す氷室さん、その彼をとりあえずベッドに横たえたのはいいけれど、そこに不釣り合いな学ラン姿の彼…
「……とりあえず、着替えた方が良くないですか?」
だからベッドの横に屈み込み、とりあえずそう問いかけてみた。
すると、ゆっくりと自身の服装に視線を移した氷室さんは、さもめんどくさそうにため息をつき、ダルそうに体を起こす。
「…はぁ。それもそうだね。
ねぇ、紫音。向こうのクローゼットの下に、スウェットがあるんだけど…」
「あー、はいはい。
今、持ってきますね。」
「ん。」
指さされたクローゼットの方に向かいながら、いつもとは明らかに違う氷室さんの態度に少し困惑する。
うん、今日の氷室さんはおかしい。あたし自身のときも然り、高熱は相当人をおかしくしてしまうようだ。
いつもの氷室さんなら、あたしに頼みごとをするなんて絶対にあり得ない。むしろ、あたしの言葉を素直に聞き入れるなんて――…