恋せよ乙女
いや、そりゃあまあ、具合悪いのに、ベッドで制服のまま寝る人なんていないだろうけれど。
「これでいいですか?」
「……あぁ。ありがとう。」
グレーのスウェットを手渡し、着替えの邪魔になるだろうと思ったあたしは、いったん部屋を出ようと氷室さんに背を向けた。
でも、その刹那。
背後から聞こえたゴツンという鈍い音に、反射的に振り返る。すると視界に入ったのは、左手をワイシャツのボタンにかけ、右手で頭を押さえる氷室さんの姿で。
「え、あの…。氷室さん?
今、もの凄く鈍い音が…」
「………何でもないよ。」
いやいやいや。
明らかに何でもなくないでしょ。
この人今、倒れかけて壁に頭ぶつけたよ、絶対。
それに、目を細めてボタンをはずしている様子から、視界が霞んでいるだろうことも容易に推測できる。
あぁ、強がるいつもの氷室さんだ、なんて、この場に不謹慎ながらも、思わず苦笑が零れた。