たまご
僕は苛立ちを抱えたまま、リビングを突っ切り、キッチンを横切り玄関まで行った。
キッチンでは、白い冷蔵庫が不愉快なモーター音を響かせていた。
僕は途中で一度、苛立ちを抑え切れずに壁を殴った。
彼女がいないからかなのか、冷蔵庫の不愉快な音のせいなのか。
痛む拳を更に握り締めて玄関に辿り着くと、そこには彼女の靴と僕の靴が散らばっていた。
彼女の、赤いエナメルの靴。
色白な彼女に、とても、よく似合う靴。