年下くんはオオカミです。




「……“誰か”居るんですか?」


その声が、保健医さんに尋ねる。

でもあの声は絶対あたしがここに居るってわかってて、ワザと聞いてるに違いない。

そうとは知らない保健医さんは、ご丁寧にも。


「宇佐美さんが、ちょっと体調が悪くて休んでるわよ」

「…そうなんですか」

「ええ。だから……」


続きを言おうとした保健医さん、だけどそれは保健室に置いてある内線の呼び出し音で遮られた。

すぐに受話器を手に取ったと思われる保健医は、


「ごめんなさい、ちょっと職員室に行ってくるわね。
あ、絆創膏ならそこの入れ物の中にあるから取って行っていいわよ。
それと、さっき言ったように先輩が休んでるんだから、静かにしててね」


そう早口に捲し立てて、返事を待たずして保健室を出て行った。

急かしいスリッパの音が遠のいて行くのを、あたしは呆然と聞いていた。

何故にこのタイミングで出て行くんだ先生。


これじゃ確実にあたしはヤツの餌食に……!!



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