年下くんはオオカミです。




あたしの存在に気がついた神谷くんは、下に向けていた顔を、こちらへと向けた。

角から背を離し、あたしと向かい合わせになる。

だから、あたしは必然的に立ち止まる形になってしまった。


「…なんでキミがここに居るのさ」

「通学路ですから」

「なら先に行ってればいいじゃないか」

「先輩のことが心配だったんで」


さも当然。

そんな風にさらっと言われた言葉に、あたしはなんとなく気恥ずかしくてマスクを少しだけ顔の上にずらした。

神谷くんは微かに首を傾けて、


「で、熱は下がったんですか?」


少しだけ心配そうな表情を浮かべて尋ねてきた。

あたしは二度、頭を縦に振って肯定を示す。





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