年下くんはオオカミです。




人間、緊張しまくると、やけに冷静になるのかもしれない。

……や、冷静っていうか、変なことばっかり考えるようになるのかもしれない。


神谷くんの鼻、パクついてやろうかな。


とか、ね。


「……微熱、ありますね」

「…へっ?」


いつの間にか目を開けていた神谷くんの、上目遣いがこちらを見ている。

伏し目がちなその顔が、あたしより年下だなんて思えない。

悔しいぜ、美少年。

あたしは後ろ頭に回っている神谷くんの手を両手で掴み、上に引っ張る。


「別に微熱なんだから大丈夫だ……って、ちょっとキミ、あたしの手を離したまえ」


さっきまであたしの手を掴んでいた方の手が、今度はあたしの両手を捕まえていた。

額を離し、けれども至近距離で、神谷くんは言う。




< 26 / 32 >

この作品をシェア

pagetop