年下くんはオオカミです。
人間、緊張しまくると、やけに冷静になるのかもしれない。
……や、冷静っていうか、変なことばっかり考えるようになるのかもしれない。
神谷くんの鼻、パクついてやろうかな。
とか、ね。
「……微熱、ありますね」
「…へっ?」
いつの間にか目を開けていた神谷くんの、上目遣いがこちらを見ている。
伏し目がちなその顔が、あたしより年下だなんて思えない。
悔しいぜ、美少年。
あたしは後ろ頭に回っている神谷くんの手を両手で掴み、上に引っ張る。
「別に微熱なんだから大丈夫だ……って、ちょっとキミ、あたしの手を離したまえ」
さっきまであたしの手を掴んでいた方の手が、今度はあたしの両手を捕まえていた。
額を離し、けれども至近距離で、神谷くんは言う。