年下くんはオオカミです。




「は、はめたのか…!」

「さあ?どうでしょうね」

「くぉお…!お主、なかなかやりおるな…」

「それはどうも」


あっさりそう返事した神谷くんに、無性に腹が立つのは何故だろうか。

そりゃ腹立つって。

あのムカつく笑みで言われたら!

あたしは「ふんっ」と神谷くんから顔を背けて、ヤツの横を素通りしてやった。


「結局行くんですか?」


背後から声が追いかけてくる。

あたしは立ち止って、マスクを外しつつ腰に手を当て、顔だけ振り返って見せる。


「うぬ!あたしは行くのだよ、少年。行くと決めたら行くのである。
ふふふ…風邪なんぞ皆にうつしてやる…ふふふ…」


ブラックなオーラを放ちつつ、あたしは再び学校への道を歩き出そうとし。


「…そうですか。じゃあ、」


言葉と共に掴まれた腕に、反射的に振り向いて。






――声を奪われた。







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