年下くんはオオカミです。
振り返らなくても誰かはわかるけど、まあ、振り返らないといけないんだろうなぁ…。
先輩として。
「……お、おはよう神谷くん。今日も朝から…ズビーッ!…いい花粉だね…」
「頭沸いてんですか?」
「なにおう!?」
「あぁ、いつもでしたね」
「なんだっtぶぇっくしょいッ!!」
「最後まで言えてないですからね」
「ズゴッ…わかっているともさ…」
マスク越しに鼻をこするあたしを横目に、隣に並んだ神谷くんは涼しい顔だ。
花粉にアレルギーがないらしい。
うらやましいったらありゃしない。
今年から、あたしの通う高校に入学してきた1年生の神谷くん。
あたしと通学路が同じらしくて、毎朝のように一緒になる。
だから名前も覚えてしまったし、声も覚えてしまった。
神谷くんも同じみたいで、あたしのことを覚えているらしく、いつもこうやって話しかけてくる。
……その内容は、いっつも狙ったようにあたしをイジるものばっかだけど。