恋する受験生



真っ黒の薄い携帯には、黒い皮のストラップがついているだけだった。



シンプルな携帯電話。


私のとは大違い。



「いいの?それがいい!!俊と一緒に見たいもん!!」



「だめ!!こんな時間に家出るなんて不良だろ?ちゃんとお母さんに認めてもらって家でドラマ見るのが1番なんだから」



「え~~~!そうなの?」



「あぁ、困ったな。俺、余計なこと言っちゃったな。じゃあ、来週までしっかり勉強したら、1回だけ勉強見てやるよ。お母さんに許してもらえたらだけど……」




「まじで?!俊、最高!!!」



「うわぁ!くっつくな!!お母さんが外出していいって言ったら、どっかで飯でも食いながら、ちょっとだけ勉強見てやるから。許してもらえるように、家でもしっかりやれってことだから!!」




私の心の中、さっきまでと全然違う。



さっきまで、ドロドロしたねばっこい感じの黒い色だったのに、今はピンクや黄色の楽しそうな色に変わっていた。



受験生なのに!!


受験生なのに、私…… 

めちゃめちゃ生きてるって感じだよ!!





いいよね。


恋したって。




恋が悪いなんて誰にも言わせない。



誰にも反対されないように、しっかり頑張るもん。


俊のおかげで、私は受験からも、うるさい親からも逃げないって決めたんだもん!!








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