恋する受験生
その日の夕方、学校帰りに、公衆電話から電話をかけた。
もう番号は暗記していた。
俊が教えてくれた夜の暗記法で…… 覚えちゃったんだ。
「もしもし~!!!紗江ですけど」
言ってから気付いたけど、名前知らないんじゃない?
「あの~、こないだの中学生ですけど~」
『あー!!わかるわかる!どうしたの?』
電話の向こうの俊は、イメージとは違う感じの電話の対応だった。
テンション高めで、声も高めで……
こんなに優しい声出されると、毎日電話しちゃうよ?
「ドラマ見ていいって言われた」
『そうか!!だから言っただろ?ちゃんとわかってくれてるんだよ』
「うん。それでね、勉強会もOKもらった」
『そうなの?トントン拍子だな。いつにする?』
俊の声の後ろがゲーセンのような雑音が聞こえていた。
「今、ゲーセン?」
『ん?あぁ、そうそう。また狙ってんだけど、今日は何も取れないよ』
後ろで聞こえる声の中には、この前にいたうるさい声の人もいるようだ。