恋する受験生



「お母さ~ん!!」


玄関先で、お母さんを呼ぶ。


あえて、普通に。


勘違いしたお母さんが悪いんだよ!!って感じで。



「いらっしゃい!!」


リビングから小走りでやってきたお母さんは……


一瞬止まった。




そりゃそうだと思うけど。




ちょっとオシャレした真っ赤なエプロンで手を拭きながら、

作り笑顔を見せた。



「あら…… いらっしゃい。わざわざ…… ごめんなさいね。紗江の為に」



ほらね。

こんな状況で、“男の子だなんて聞いてない”なんて言えるわけないもん。


強行突破した私、正解だったよね!!




「急にお邪魔してすみません。1時間ほどで帰りますので」


丁寧に頭を下げた俊。


その姿にまたキュン。



お母さんも、さっきまでの驚いた顔じゃなく、安心したような顔になっていた。




「ご心配だと思いますので、お母さんのいらっしゃる部屋で勉強します」



俊って……


すごい。




そんなこと言える男の子、私の周りにはいないよ。



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