恋する受験生
「改めて自己紹介していい?」
私は正座して自分の名前と志望校を言った。
俊も真似して正座した。
そして、紗江ちゃんって呼ぼうかなって言った後に、やっぱり紗江って呼ぶって言い直した。
理由は、私が“俊”って呼んでるからだって。
呼び捨てにされるなんて、嬉しすぎる。
「ねぇ、俊。私、俊に出会わなかったら、絶対に合格できなかった」
「どういう意味?」
「あの日、俊に会えなかったら…… 私は勉強なんていやだって思って、毎日家出を繰り返していたかも知れない。お父さんやお母さんの愛情にも気付かずに、ただうざいって思って、反抗していたと思うんだ。それにね、俊に教えてもらったことは何でもすぐに理解できるっていうかね。俊がガンバレって言ってくれたら私、頑張れるの」
俊は、机に肘をつきながら話を聞いていた。
「それって、恋だよね?」
びっくりした顔の俊。
「違うんじゃない?」
「じゃあ、何?」
「さぁ~?」
首をかしげた俊。
俊は、とにかく勉強を始めようと言って、ノートをひらいた。