恋する受験生
このゲーセンの2階は、UFOキャッチャーが何台も並んでいた。
いた。
俊……
手編み風マフラーを首の周りにぐるぐる巻きにして。
ブレザーの前のボタンを外して。
中に着ている派手な黄緑のトレーナーがイケてる。
特大のお菓子を狙う俊。
その周りには、3人の男子。
2人の女の人。
とっさに隠れた。
その女の人が、俊が話してくれた“保留中”の人なのかなって思った。
ちゃんと断るよって言ってくれた俊だけど、それ以来その話をしていなかった。
「ね~!取ってよ。絶対!!どうしても欲しい!」
ねちゃねちゃした感じの話し方の女の人だった。
甘え上手なんだろう。
頑張る俊の隣でしゃがみ込んで、上目遣いで俊を見る。
「任せとけって」
俊は、ぬいぐるみを取ったあの日のように慣れた手つきでお金を入れる。
私の知らない世界。
入ってはいけない世界。
見ちゃいけなかった。
知らない方が良かったんだ。
私の前にいる“優しい俊”を信じていれば、それで良かったんだ。