恋する受験生
5
次の週も、その次の週も俊は家に来て、勉強を教えてくれた。
私はあの日、ゲーセンで見た光景を忘れる努力をした。
俊と一緒にいる時間は忘れることができるのに、俊が帰った後は思い出してしまう。
また、あの女の人達と遊んでいるのかなって思うんだ。
私は俊に何を求めているんだろう。
“紗江が合格したら付き合おう”って言ってもらえるとでも思っているの?
俊は、誰にでも優しいだけ。
でも、それは悪いことじゃない。
私を救ってくれたんだから。
「何かあった?」
シャーペンの芯を押しては戻し押しては戻し……
そんな私に俊が不思議そうな顔で問いかけた。
「今日で、最後でいいよ」
私の口から出たのは、自分でも驚くセリフだった。
どうしてそんなことを言ってしまったんだろうと後悔した時には、もう遅かった。