初恋の味はどんな味?
「……浜中君ッ。」



浜中君はピタッと止まったけど、振り返らなかった。



私は浜中君の背中に向かって言った。



「ありがとうッ。」



精一杯の感謝をこの言葉に詰め込んだ。



それでも、まだまだ伝えきれない。



「ホントにありがとう…ッ。」



浜中君は振り返って笑った。



真っ白な歯が眩しく輝く。



そして、自分の目元を指差して、なにか言った。



『笑って。』



目元に手を持って行くと、そこは濡れていた。



泣いてたんだ…。



ゴシゴシと目を擦って、精一杯の笑顔になる。



浜中君は親指を立てて頷くと、ドアをくぐって見えなくなった。
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