落下の果実
「窓がどうかした?」
「いや、いいのよ、別に。うん、ここはあたしの〈世界〉じゃないもんね」
ちょっとくらい文化が違ったって驚きませんヨ。
「ところで、君誰?」
諦めのいいあたしにほんとに今さらな質問をしてくる異世界のヒト。
「………柏木 和佐(カシワギ カズサ)。こんなんでも正真正銘、高校生……って言っても分かんないか」
「カズサ。珍しい名だね」
「そ?ま、たしかに女の子らしい名前ではないけどね」
小学校の頃から、からかわれるネタと言ったら低い身長とこの名前しかなかったからね。
「あなたは?」
あたしも今さらな質問で返すと彼は不思議がることもなく、にこやかに名前を教えてくれた。
「ガリゲア・イサウ・マオセリン・ラディッシュ」
………長っ!?
「………オッケー、オッケー。略してラディね」
はっきり言って、ラディッシュってとこしか記憶に残っていない。
そこ略すしかないでしょ、これは。
「ラディ?………それはまた、ずいぶんと楽しげな響きだね」
当の本人はとっても楽しそう。
なんか、この人不思議だ、ほんと。
楽しげな響きってなんだよ、響きって。