落下の果実
「で、ラディさん。あたし、地球に帰れるのかしら?」
「チキュウ?」
「………嘘、それも通じない?」
まさかの文化の違いだ。
「カズ、おまえ、どうしてそんなに落ち着いているの?」
「はい?」
ラディという自分の愛称に引き続き、カズというあたしの愛称の響きも気に入ったのかラディはずいぶんと親しげにあたしを呼んでくる。
いや、別にいいんだけどね。
ラディってば、美少年だし。
カズでも、カズサでもなんでも呼んでくれって感じだけどね。
「ここはカズのいた世界とはずいぶんと違っているんだろう?なのに、どうして慌てない?」
「え?んー、そんなこと聞かれてもねぇ。あたしだって分かんないんですよね~。なんていうか、ここ、しっくりくる感じだし?てか、言葉も通じてんだからきっとどうにかなるわぁ、程度の考えしかないっていうか………。あたし、基本的にポジティブシンキングなのよ」
「ぽじてぃぶしんきんぐ?」
「そうそう。前向きなのね。だいたいここが異世界だろうが、夢の世界だろうが、世界の果てだろうが、どうでもいいワケ。だってなんか楽しそうだし。意味の分からない数学とか古典とかやらないですみそうだし。ラッキーくらいの気持ちしかないのよね~」
なはは、と笑うとそうか、とラディはその綺麗な瞳を細めた。
「楽観主義なんだね、カズは」
「そそ。その方が絶対人生楽しいのよ」
おまえは楽観すぎだってよく言われるけどね。
「もう1つ、聞いてもいいかい?」
「どぞどぞ。答えられる範囲なら、カズさん答えちゃう!」
「カズの瞳も髪も珍しい色をしている。それは生まれつき?」
「………へ?」
瞳?
髪?
あたしの眼も髪も生粋の日本人の色だ。
いや、目はちょっとグレーっぽいけど。
髪は染めてないから真っ黒だし。
そんなに珍しく………あるのか。
改めて、ラディの容姿を見て考えを改める。
金色とか、銀色がここでは主流なんだとしたらたしかにこの色は珍しいかも。