落下の果実



「ガリゲア・イサウ・マオセリン・ラディッシュ。この女はなんだ」



低い無機質な声が聞こえた。


ビクリと視線を向ければ、黒尽くめの男。



髪は黒、瞳も黒、着てる服も黒。

銀髪のラディに比べて風貌は日本人に近いけど、纏う雰囲気は同じ人間だとは思えない。


野獣だ、野獣。

この殺気はもはや野獣。



「キリュウ、お客様だよ。そんなに殺気を向けちゃダメ」



キリュウと呼ばれた野獣さんはあたしを殺そうとするかのように睨んでいる。



ふんだっ!

そんなに睨んだって負けないんだからっ!!



「ガリゲア・イサウ・マオセリン・ラディッシュ、おまえ自分の立場を忘れたか」



いちいちラディを長ったらしい名前で呼ぶ野獣さん。


素晴らしい記憶力に拍手。



「忘れてないよ、キリュウ。まったくいつも真面目なんだから」



クスクス笑うラディに野獣さんはイライラと青筋を立てている。



キレてるよ!?

これ絶対キレてる!!



「ら、ラディ?」



危なくないかい、とラディの服の裾を引っ張ればラディはえ?と首を傾げて呑気なもの。



「ガリゲア・イサウ・マオセリン・ラディッシュ、いい加減にしろ。そうやって厄介なものを拾ってくるからこんなことになっている。分かっているのか」


「ちょっと!厄介なものってあたしのこと!?そんな言い方はないんじゃない!?ちなみに言うならあたし、拾われたんじゃなくてここに逃げてきたのよっ!」



ほんと失礼なヤツ!


初めて会うってのにどうして厄介もの扱いされなきゃならないんだ!!



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