落下の果実
「ほら、強い子でしょ?昨日もね、ガラシィから走って逃げてきたんだって」
「ガラシィから?」
驚いたように眉を寄せる野獣。
こんな失礼なヤツ呼び捨てで十分だっ!!
「女、何者だ」
「人に名前聞く前にあんたが名乗るべきじゃない?」
あたしの指摘に野獣はムッと眉を寄せたけど、すぐに口を開いた。
「キリュウ・フレイグ・マタイン・シュウラ」
また長い名前だな、おい。
……お約束のようにシュウラしか覚えてないから、シュウと呼ぶことにする。
「和佐。よろしくね」
「カズサ?変な名前だな」
「人の名前に文句つけるのやめてくれる?」
ほんっと失礼なヤツ!!
「シュウは、ラディのなんなわけ?」
「……シュウ?」
「あんた、なんとかかんとかシュウラでしょ?」
あたしの略し方が納得いかないらしい。
嫌だと顔をしかめるけど無視。
「呼ぶならキリュウと呼べ」
……命令口調だからこれも無視。
「おまえ、武術の心得が?」
「違うよ、キリュウ。カズはニンゲンだ」
「……ニンゲン、だと?」
また、おまえは厄介なものを。と失礼なことを言うシュウ。
コイツ、絶対死ぬまでシュウって呼んでやろう。
小さい復讐を決意した。