落下の果実
ヤバい。
ポジティブなあたしでも諦めかけたときだった。
目の前に明かりのついた小屋が現れた。
ぼんやりとやわらかな光が灯っている。
助かった、人家だ!
礼儀云々はまったく気にせず、あたしはその小屋に逃げ込んだ。
まだ外では低い唸り声が聞こえている。
けれど魔物サンはあたしを深追いすることなく、しばらくしたら諦めて帰っていった。
「……助かった〜」
扉にジッと耳をつけていたあたしはホッと力を抜く。
でも本番はこれからだった。
「………これは、これは。ずいぶんと小さな侵入者だね」
人の声にビクッと動きを止める。
そうだった!
あたし、勝手に人の家入っちゃったんじゃない?
いくら必死だったとはいえ、ものすごく図々しい子なんじゃないだろうか。
だいたいあんな生きモノが森にいるくらいだし、ここもヒトの家じゃないのかもしれない。