落下の果実
あわあわ、と視線を彷徨わせてあたしは必死で言い訳を考える。
どうすべき?
いくら異世界(っぽい)とはいえ、不法侵入は犯罪だよね?
謝ってすむなら警察はいらねぇ!とか言われちゃう?
………てか、ここって警察とかあるのかしら?
慌てすぎていろんなところに意識が飛びながらも、あたしはゆっくりと振り返った。
「あのっ、変な生き物に追いかけられ………へ?」
あわあわと言い訳をするあたしの目に飛び込んできたのは………
「にん、げん………?」
………そう、人間だった。
「人間!?え、ここどこっ?!」
フツーに考えればおかしいことじゃない。
だって異世界にやって来た、なんて考える方がおかしいんだから。
いや、いきなり夜の森に来ちゃってるとこもおかしいんだけどさ。
「ニンゲン………。へぇ、〈来訪者〉か。珍しいね」
クスクスと笑う彼は驚くほど綺麗な人だった。
さっき見た月と同じ色をした綺麗な瞳。
白じゃなく、煌めく銀色をしたサラサラの髪。
透けるように白い肌はきめ細やかで、小さな顔にバランスよく目鼻が配置されている。
スラリ、と手足は長くて、スタイルの良さはモデル並み。
でもきっとそこら辺のモデルなんかより彼の方がずっと綺麗だ。