切恋~First Love~
アイツって決まったわけじゃないのに。
そうだよ、そんなの数百分の1の確率だよ?
「・・・あたしが好きになったのは・・・・・・」
それにアイツ、佳耶の嫌いなタイプだし。
俺様だし。
バカだし。
人のこと考えないし。
・・・・・・そうやって何度けなしても消えない、顔。
その顔は紛れもなく、
「・・・・・・神崎涼っ・・・なんだ・・・」
神崎涼―――――。
少しの間の沈黙。
強く柔らかい風が、あたし達を撫でていった。
肩まで伸ばした髪が、サラサラと風になびいた。
「・・・・・・そうなんだぁ」
いち早く沈黙から抜けたのは流菜ちゃんだった。
あたしは何て言ったらいいのか、言葉が思いつかなかった。
一応、自分の『気になっている人』になっている、神崎涼。
素直に親切な言葉をかけられない自分がいる。