切恋~First Love~


あたしなら、すぐに神崎涼のことなんて忘れられる。


すぐに『普通』に戻れる。


「南美、流菜ちゃん・・・ありがと」


この佳耶の笑顔がなくなる方が辛いから・・・。


「でもあたし、1つ決めてるんだ」


佳耶は食べ終わったお弁当のふたを勢いよく閉め、立ち上がった。


逆光で、佳耶の黒いシルエットしか見えない。


「絶対に『好き』を態度に表さない。向こうがあたしを好きになるよう仕向けてやるの!」


・・・・・・はい?


何て?


「今回はあたしが神崎涼に負けたけど、神崎涼をあたししか見れないようにしてやる!次は絶対ほえ面かかせてやるんだからー!!」


最後の言葉はほとんど叫んでいた。


普通の人が聞いたら、


「どれだけ自信家なんだよ」


って思うかもしれないけど、佳耶だもん。


負けず嫌いの佳耶だもん。


それに佳耶ならきっとできる。


いつもの佳耶に戻って、こっちに笑顔でピースを向けている。


なんだか嬉しくて、つられて笑っちゃった。


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