切恋~First Love~


そんなこんなで夏休みがあと2週間に迫った、ある日。


「佳耶ー、流菜ちゃーん!理科移動だよー」


これでもかと蒸し暑くなってきている今日この頃。


それなのにも関わらず、冷房が働かない教室のクーラーを睨む。


廊下に出ても教室とさほど気温は変わらない。


「移動教室って、1年の頃以来じゃない?」


手で顔のあたりを仰ぎながら佳耶が言う。


効果が期待できそうもないけど、せめてもの救いを、と思いあたしもまねする。


「ねー。でも流菜、理科室好きだよー。何かこう、ひんやりした感じが」


「え、流菜ちゃんてお化けとか好きだったりする?」


冗談半分で聞いてみる。


「んー?お化けより幽霊の方が現実味があっていいよね。流菜、夏のホラー番組とか結構好きだよ」


・・・・・・流菜ちゃんの意外な趣味発覚。


ていうかお化けと幽霊の違いって何?


呼び名が違うだけじゃないの?


小さな引っ掛かりに頭をひねっていると理科室に着いた。


黒板に書かれている、『教室の席順に座れ』という指示。


理科室の席は丁度、教室の席の隣の人と向き合うような形になっているから・・・。


もちろん目の前は神崎涼。


・・・何て言うか、ありがた迷惑?


あたしはそこで小さな言葉の突っかかりに気付き、ハッとした。


いやいやいや、全然ありがたくないじゃん。


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