切恋~First Love~


でも種類を変えてみても結果は同じだった。


「・・・何で入んないのー・・・誰かやってー・・・」


期待をせずに1人でつぶやく。


つぶやいてみても予想通り、誰も名を挙げてくれることはなかった。


ガツガツと金属がぶつかり合う音だけが、あたしの耳に入る。


何度も繰り返している同じ作業に飽きて、電源装置の近くに頬杖を付き、それを睨んだ。


そろそろ諦めようかと思っていた時。


「そんなに頑張って出来ねぇなんて俺以下だな」


本日何回目なんだろうという、神崎涼のけなし言葉。


「だってさぁ・・・」


反抗する気にもなれず、視線を合わせずに曖昧に返事をした。


いつもはここで終わるのに。


「バカすぎるだろ。貸してみろよ」


今日もそうだと思っていたけど。


どうも違ったみたい。


今までイスの背もたれにもたれてくつろいでいたソイツが、どんどん近づいてくる。


机に。


電源装置に。



・・・あたしに。



あたしの目に映るのは、スピードを落とした世界。


完全に、スローモーションの世界。


ゆっくりと神崎涼が近づいてくる。


< 165 / 337 >

この作品をシェア

pagetop