切恋~First Love~
「藤井、できたぞ。・・・・・・おい、生きてるか?」
神崎涼の声で目を覚ます。
神崎涼が離れていき、視界に光が立ち込める。
「・・・あ、いや、うん・・・」
夢から覚めたように、ハッキリと理科室の様子が目に映る。
「ホントかよ」
ブンブンと頭を縦にふる。
神崎涼の声にやけに大袈裟に反応してしまう。
声が耳を通さずに直接頭に入ってきて、そのまま心臓に流れ込んでいくような感覚。
いや、もしかしたら頭にも入ってきていないのかもしれない。
とにかく、今のコイツの声はあたしの胸を掻き乱すには十分だった。
「・・・おい、ボーっとしてるけど大丈夫か?」
この声を聞くたびになぜか胸がきゅうっとなる。
何かに締め付けられている感じ。
そしてなぜか、
「無視すんなよ。・・・顔赤いけど、熱あんの?」
神崎涼の声にどうしようもなく泣きたくなる。
「・・・何でもない」
あたしは誰にも顔を見られたくなくて、机に突っ伏した。
こんな時に限ってそんなに優しく声をかけないで。
嫌いになりたかったのに。
そうして、早く楽になりたかったのに。
こんなにドキドキしちゃ・・・だめだったのに。
もう、戻れないところまで来ちゃった。
心のどこかで、そう思った。