切恋~First Love~


「藤井、できたぞ。・・・・・・おい、生きてるか?」


神崎涼の声で目を覚ます。


神崎涼が離れていき、視界に光が立ち込める。


「・・・あ、いや、うん・・・」


夢から覚めたように、ハッキリと理科室の様子が目に映る。


「ホントかよ」


ブンブンと頭を縦にふる。


神崎涼の声にやけに大袈裟に反応してしまう。


声が耳を通さずに直接頭に入ってきて、そのまま心臓に流れ込んでいくような感覚。


いや、もしかしたら頭にも入ってきていないのかもしれない。


とにかく、今のコイツの声はあたしの胸を掻き乱すには十分だった。


「・・・おい、ボーっとしてるけど大丈夫か?」


この声を聞くたびになぜか胸がきゅうっとなる。


何かに締め付けられている感じ。


そしてなぜか、


「無視すんなよ。・・・顔赤いけど、熱あんの?」


神崎涼の声にどうしようもなく泣きたくなる。


「・・・何でもない」


あたしは誰にも顔を見られたくなくて、机に突っ伏した。


こんな時に限ってそんなに優しく声をかけないで。


嫌いになりたかったのに。


そうして、早く楽になりたかったのに。


こんなにドキドキしちゃ・・・だめだったのに。


もう、戻れないところまで来ちゃった。


心のどこかで、そう思った。


< 168 / 337 >

この作品をシェア

pagetop