切恋~First Love~


それなのに、話が少しでも途切れてしまうと頭に浮かんでくる、2人の顔。


そして佳耶と神崎涼の顔を見るたびに、強く頭に記憶される。


「佳耶ちゃーん、南美ちゃーん!2人は種目、何出るの?」


「あたし借り物ー」


「あたしはクラ対」


「へぇ、佳耶ちゃんはクラ対かぁ~。見たことないけど、確かに運動神経よさそう。流菜は南美ちゃんと一緒で、借り物出ようかな~って思ってる」


「え、本当?ていうか、あたし借り物以外に出れるのないしー」


半ば開き直りも交えて、流菜ちゃんに言った。


いや、本当にないからなぁ・・・。


「流菜も運動苦手なんだぁ。100メートル走やったら絶対こけるし」


・・・それは苦手とかの問題じゃない気がするんだけど。


あたしはひとまずハハハと笑っておいた。


「おーい、席付けー。プリント持ってきたから配るぞー」


教室のドアの開く音がして、弱メンが入ってきた。


「じゃあねー」


佳耶と流菜ちゃんに一声かけて、あたしは席に戻った。


配られていたプリントを後ろにまわす。


ザッと目を通してみたけど、種目の変更はなかった。


種目、ルール、順番・・・全てのキーワードが去年の体育祭を思い出す。


あの物凄い砂ぼこり、異様なまでの盛り上がり。


今年はどんな体育祭になるのか。


まだ初夏を少し過ぎただけの今、夏をすっ飛ばして、もう既に秋のことを考えていた。


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