切恋~First Love~
辺りは暗く、たよりになるのはその音と街灯だけ。
だからなかなか音の源に辿り着けない。
近づいたと思ったら、また遠ざかる。
何度もそれを繰り返した。
そして、ある角を曲がった所でようやく黒バイを見つけた――――
「・・・っ!」
それと同時に見たもの。
心臓が強く、脈打った。
頭で理解するより早く、身体が動く。
いましも曲がろうとしていた角に引き返して、身を隠した。
嫌な汗が、身体を伝う。
さっきまでの暑さが嘘だったかのように、涼しさを感じた。
頭が、さっきの映像を認めたがらない。
深く深呼吸し、意を決してもう1度顔を覗かせた。
・・・さっきと変わらない。
同じ映像が頭の中でグルグルとまわる。
それを現実を認めた今、その場から走って逃げ出した。
何も考えられなくて・・・・・・いや、違う。
何も、考えたくなくて。
さきの様子が頭から消したくて、家までの道のりを1回も止まることなく無我夢中で走り続けた。
途中で肺が苦しくなったけど、逆にそれが心地よかった。
もっと、もっと、苦しくなってよ。
この激しい胸の痛みを、感じさせなくなるくらい・・・。