切恋~First Love~
9月◇1
「じゃあね、南美」
「・・・あ、うん。バイバイ・・・」
きれいな夕日を背景に、また今日が過ぎていく。
佳耶の背中を見ながら溜め息をつく。
・・・今日も言えなかった。
毎回、言葉がのどに引っ掛かって出てこない。
もう覚悟はできてる・・・はずなのに。
2学期が始まって、早1週間。
一体あたしは、どれだけ長引かせるつもりなんだろう。
できるだけ流菜ちゃんがいない時に、2人きりで話したい。
だけど、なかなかそんなタイミングがない。
自分の中でいろんな言い訳が飛び交う。
それなら、佳耶を呼び出せばいいこと。
帰り道2人っきりの時に、話せばいいだけのこと。
・・・なのにそれらを実行しないあたし。
やっぱりまだ覚悟が決まってないってことなのかな。
とんだ臆病者。
いっそのこと、このまま隠していこうか。
そう開き直りかけたこともある。
だが、あたしの善心がそれを食い止めた。
そのお陰であたしは、まだ楽になることを許されない。