切恋~First Love~
いつの間にか、校舎の外れにある美術室に着いていた。
「南美、何色がいるんだっけ?」
佳耶が棚を覗いて、その中をガチャガチャとあさる。
「えーっと、赤と黒は教室に置きっぱなしにしてたから・・・。ピンクとオレンジ、だった気がする」
あたしも佳耶と同じように棚の中を探した。
「くっさ・・・。これシンナーの臭いだよね?」
「え、佳耶嫌なこと言わないでよ」
「あははっ」
「はははっ」
ひとしきり笑う。
その後に、急に訪れる沈黙。
まるで、まわり一面を田んぼで囲まれたド田舎にいるような感覚。
技術室の中にはあたしと佳耶しかいない。
今日、2度目のチャンス。
これをモノにしなきゃ、いつ言うの。
佳耶がこれ以上離れていって欲しくない。
受け止めてくれる、きっとそう。
何度この言葉達を心の中でつぶやいた?
覚悟を決めた日から、どれだけ経った?
言え、言え、言わなきゃ。
「佳耶・・・さっき、言おうとしたこと・・・思い出した・・・」
「ん?何?」
あたし、今度こそ言えるかな。
・・・違う、言うんだ。
つぶやくだけは、もう終わり。