切恋~First Love~
でも、だからこそ、今あたしはが神崎涼にドキドキしている。
もっと『好き』が増えていく。
あたし達のクラスの先陣を切って歩く神崎涼を、遠目で見る。
「佳耶ぁ・・・神崎涼、かっこいいよ・・・」
あたしのその声は周りの声に掻き消され、佳耶と流菜ちゃんにしか聞こえない。
あたしはこの頃、何かあるたびに好きを連発している。
しょっちゅう佳耶と流菜ちゃんに話してる。
主には佳耶だけど。
もう慣れちゃって、恥ずかしさなんて微塵もない。
逆に清々しい。
とにかく伝えたい、言いたい、話したい。
少しでも『好き』が増えちゃったら、もう抱えきれない。
心という箱に入りきらない想いは、溢れるしかない。
「・・・あたしも、さっきのは結構きた。あれは、かっこいいね」
佳耶も小さい声でつぶやく。
お互い言い合える、この関係。
それは切なくて、どこか優しい。
「トロいんだよ、畜生があ!」
勝ちたいのは、分かる。
「走れクソがああぁぁ!」
応援してるのも、まあ分かる。
「とっとと動けやあぁ!!」
でも、応援の仕方は考えた方がいいと思う。
罵詈雑言まがいの応援をしている神崎涼の声。
それらは競技中のあたし達のクラスの生徒の心臓を激しく動かす。
競技に負けた人は、毎回ビクビクしながら応援席に戻ってきた。
それが神崎涼の友達なら、まだいいかもしれない。
神崎涼と関わりのない人の気持ちを考えると、思わず拝みたくなる思いだ。